STORY by MIYOTA AERO FACTORY
(迷機・迷車 図鑑 より)
1: 浮揚動力機とは
信州に拠点を置く御代田航空機製造(MIYOTA AERO FACTORY) は、一時期、航空機でも飛行船でもなく空中を自由に飛ぶ反重力の乗り物の研究を行っていた。このプロジェクトは森林整備や山岳救助活動など信州特有の特殊作業に従事可能な機体の開発と実用化を目指すものであった。浮揚動力機とよばれる一連の実験機が製作され、さまざまな理論技術がテストされた。高エネルギー・高電圧の制御は困難をきわめ、この分野の研究開発は中止となったが、培われた技術は、フリーエネルギーの機体への応用研究に生かされることになる。
2:反重力 知られざる技術
御代田航空機製造で製作された一連の浮揚動力機には、2つの反重力技術が使われていた。一つは「ビーフェル・ドブラウン効果(The Biefeld-Brown Effect)」で知られる技術だ。現象に気付いたのは タウンゼント・ブラウン(Thomas Townsent Brown 、1905-1985 )だ。
それは、コンデンサーの両極に高電圧をかけるとその系自体をマイナス帯電側からプラス帯電側に移動させる自己加速度が発生するというものだ。電場の影響に比較すると観察することが難しい重力場の影響が高電圧下で顕著になる現象だ。物理の基礎であるニュートンからアインシュタインに至る理論物理学では正確に説明できなかったため最近まで電磁気工学の表舞台ではあまり語られてこなかった。正統派学会では真剣に取り上げられなかったこの現象については、しかしさまざまな研究者や研究機関、航空宇宙関連企業で実証研究がされてきたと言われている。一部の最先端航空機には機体の前部をプラス帯電に、排気ガス(後方)をマイナス帯電させて推進力を得る方法がすでに実用化されているとも言われている。
もう一方の反重力関連技術が サール効果発電ディスクだ。英国の電気電子技術者であるジョン・サール(John.R.R.Searl、1932-)の発明によるものだ。
特殊なドーナツ形磁石の周りに、さらに小さな円筒形の特殊磁石を複数配置し、磁石同士の反発力でそれらが自己回転する(ある臨界点を超えると回転が加速的に増加する)ことで高効率の発電装置として研究がなされてきた。驚くべきことに、ディスク自体がマイナス質量になる(軽くなる)ことが確認されているのだ。
完成形は3重のリングで構成された装置となる。通常の発電機では発電と共に温度が上昇するが、サール効果発電の場合は逆にどんどん低温になってゆく、電子は外に向かってスターターリング内を一方向に光速まで加速されるため電子間のカオス的な衝突が無いためだ。サールによると理論的には円盤型の高速飛行物体の製造が可能という。現在独自の研究機関を立ち上げ高効率発電による地球環境への貢献を提唱している。
3:開発現場スナップ
御代田航空機製造で製作中の 動力機SB1型。サール効果発電機の装着状況がよくわかる貴重な画像だ。一連の動力機は試作機のため機体構造はいたってシンプルである。特に機体前部はほとんど発電機用スペースであり、それらは機体下を通る3本のメインビームにボルトで固定されている。機体後部は小型のサール発電機を収めているため、ビーフェルドブラウン効果により推力を得るコンデンサーは機体の外にはみ出してしまった。 操縦席はその上に位置し、磁場シールドパネルで覆われている。推進エンジンのための高電圧はサール効果発電機から得ている
機体構造が単純にできるもう一つの理由が、サール効果発電機の驚異的な冷却効果だ。そのため、各部の冷却装置が丸ごといらなくなった。
浮揚動力機3号の諏訪湖でのテスト風景。初期の浮揚動力機の下部は船体形状をしている。これは機体の性能がまだ不安定であったため万一機器のトラブルで落下してもいいように水面上の比較的低い高度でテストされたためである。
問題は機体を帯電させるためには乾燥した環境が必要であり、湿気や水分の付着が問題になることだ。このためインナー電極が開発された。電極を収める機体内部はヘリウムが充填されているという。
上はSB1型のコックピット。
一部ブラウン管モニターも使われていた。試作機のためいろいろな部品を寄せ集めて製作されたことが伺える。左席(機長席)の左側のレバ―はJRの電車からの流用という。
浮揚動力機は基本的に航空機と同じような計器が備わっている。中央縦に並んでいる計器類は機体軸線に沿って3つあるサール発電装置の監視計器盤だ。大型円形のサール発電機を3ユニット収めるためノ―ズが異様に長くなったのはそのためだ。前方視界は非常に悪そうだ
浮揚動力機3号が飛行テストを終えて、御代田航空機製造のハンガーにけん引されてきたところであろう。機体下面には前部に2輪、後部に1輪の格納式地上滑走用ギアが見える。3号機の太った機体の中にはコンデンサーの電極が収められている。後部は強力なタービン式の発電装置を持っている。ここからはよく見えないがコックピットの後側のパネルもマイナス電極であり、こちらは主に推進力を得るために使用される
御代田町某所で低空浮揚テストされるSB1。浅間山が見えることから、草越高原あたりであろう。
SB1は動力機1号機の流れをくむ機体で、サール効果発電機で反重力を発生しており、それを2から3セットを前方に収めるため、機体はノーズの極端に長い新幹線のようなデザインになってしまった。
4: 浮揚動力機の系譜
5: ディテール
各動力機の仕様・性能の詳細は不明だが、ビーフェルドブラウン効果を基にした上記動力機3号の場合は、コンデンサーの形状とサイズの影響が大きかったといわれている。そのうち、円盤型形状の電極が最も効率よく反重力効果を発生したといわれている。
一方、サール効果発電ディスクタイプでは臨界点を超えてからの制御が非常に難しく、磁性材料の違いでも性能に差があったといわれている。どちらの技術も温度降下が見られ、また、高度があがるほど浮揚性能が上昇したといわれている。
6: 写真で見る浮揚動力機
御代田町エコールみよた公民館の町民写真展からの一枚。向原の牧草地周辺を低空飛行する3号機。このタイプの実用上昇限度は約1000メートルといわれているが定かではない。
御代田町広戸地区収穫の終わったレタス畑をお借りしテストする1号機。背後遠方に浅間山が見える。
7: 各モデルの特徴
■ 動力機 L1
御代田航空機製造で製作された浮揚動力試験機の中でも、極めて小型のもののひとつ。初期に開発されたタイプで、”アイロン”というニックネームで呼ばれた。レールからパルス電圧の供給を受け浮揚した。反重力エンジンとしては ビーフェルド・ブラウンコンデンサーとサールディスクの両方を装着できる。
■ 動力機 SB1
動力機1号の軽量改良型。サール効果発電機で発生された電気エネルギーを活かし後部に円筒型のビーフェルド コンデンサーを積んで、エネルギーサーキットを完結したタイプだ。これで得たデータは後に、フリーエネルギー車両の開発に生かされたという。
■ 動力機1号
御代田航空機製造が開発した浮揚動力試験機。特殊な円筒形の高電圧発生装置を応用した浮遊システムがテストされたが、問題が多く開発は中止された。装置の一部は発電機用に改造され、みよた町滝沢公民館で最近まで使用された。
■ 動力機2号
御代田航空機製造が開発した浮揚動力2号試験機。コンデンサーの形状特性テストのため機体下部はいくつかのタイプが取り替えられ評価された。浮揚力が十分でないため機体はヘリウムタンクを兼ねた。そのためこの手の動力機は丸く大型化し、ニックネームは「お団子」「おにぎり」などいろいろある。
■ 動力機3号
御代田航空機製造製の浮揚動力試験機の3号機。機体内部表面各部が電極の役目をし、機体全体が強力なコンデンサーを構成することで、ビーフェルド・ブラウン効果を発生させる浮遊システムを持つ。浮揚高度は数百メートルを達成したが、理論的には高度が上がるほど揚力が増大する。高電圧のコントロール装置に問題があり量産化は見送られた。
■ 動力機4号
浮揚動力試験機のひとつ。ビーフェルド・ブラウンコンデンサーと3基の高速回転するサール効果発電機の能力を融合し試験された機体。見た目より機体は軽く作られている。後部のノズルはロケットのような推進用ノズルではなく、発電用タービンの廃熱煙突である。
■ 動力機5号
サール効果発電ディスクとビーフェルド・ブラウン効果による浮揚動力機。機体外部には不定形形状に設定できるヘリウムタンクが増設できる。後日貨物輸送用に改造された。図体の割に積載荷重は軽トラック以下で、また初期の発電ユニットは相変わらず騒音が大きく不評だったが、雪深い冬季の森林整備やヘリが入れない深い谷の遭難救助に最近までテスト的に使用された。
■ 動力機7号
浮揚動力7号機はイオンパルスの指向性を強め、前方への推進速度を高めたタイプである。一連の大型の浮揚動力機のテストは一般的に安全の確保のため水面上で行われる。そのため下部デザインは船底形をしているものが一般的。テストフライトは諏訪湖で実施された。
■ 動力機SB1G
SB1と並行して製作された。オーストラリアの反重力レースに参加依頼を受け製作された。
あとがき:
タウンゼント・ブラウンおよびジョン・R・R・サールは共に実在の人物で、電磁気工学の特殊分野で多くの業績を残している研究者です。この小冊子の内容は二人の技術的理論の一部を背景構築に借用にしていますが、御代田航空機製造にまつわる物語自体には科学的な裏付けはありません。という訳で、どうぞ微妙な空想の世界をお楽しみください。いや、もしかしたら現実になるかも。(作者)
References:
1) “The Biefeld Brown Effect”,
(2014/10/04)
2) V.Vroschin&S.Mgodlin, Experimental Research of the Magnetic-Gravity Effects,
Full Size SEG tests, Russia,
.
3) Takahashi, Musya, Explanation of Dynamical Biefeld Brown Effect from the Standpoint
of ZPF Field, JBIS, Vol61,2008
4) “The Biefeld Brown Effect”,
(2014/09/29)
5) Inteview”Tery Moor on the 2007 Searl Repulication Project” American Antigravity, 2007
6) Searl Solution,,(2014/09/29)